写真撮影において、「技術は重要ではない」という言説はしばしば見受けられるが、これは実情にそぐわない。最新鋭のデジタルカメラとピンホールカメラでは、スポーツ撮影のような特定の目的においては明確な性能差があり、技術の重要性は不可欠だ。

その一方で、かつて著名な写真家が語った「重要なのはカメラを構える人間である」という言葉もまた、深く共感できる真実である。
では、この20年でカメラ技術が飛躍的に進歩したにもかかわらず、なぜ写真表現そのものは停滞し、相互模倣や閲覧数稼ぎに終始する傾向にあるのだろうか。

その背景には、ソーシャルメディアにおける「注目経済」が大きく影響していると指摘されている。イノベーションを追求する写真家にとって、閲覧数を最優先するならば、この仕組みが創造性を阻害する大きな要因となり得る。

しかし、ソーシャルメディアや注目経済が現実世界の全てではない。むしろ、それらから一歩離れた場所で、写真がどのように鑑賞され、評価されるのかという点こそが、真に重要であるとされている。